心リハ UP TO DATE
コラム:仕事率は運動量・負荷量と運動強度、全く違うもの
1 仕事率・パワー(Work rate, Power)
外部に対して物理的に行う仕事(質量のある物体を動かす)を定量したものが“仕事 率”。単位はワット(W)で毎秒1ジュール(J)の仕事をすると1Wとなる。1ニュー トン(N)の力が質量1kgの物体を力の方向に1メートル動かすのが1Jである。「60 W の電球」や「自動車の馬力(1仏馬力=735.5 W)」と同じ表記である。完全な0 Wに設 定したサーボモータ型自転車エルゴメータをこいだ場合には、外部に対して仕事をし ていないので仕事率はゼロだが、自分の足を動かすエネルギーを使っているので運動 強度はゼロではない。動かない壁を押すような等尺性負荷の場合や電動トレッドミル 上での運動も同様である。なお、単位は通常小文字で表記するが、WもJも人名由来 (James Watt、James P. Joule)のため大文字で書く。(表現:高い低い、大きい小さ い、上げる下げる)
2 運動強度(Exercise intensity)
仕事や運動をする時に、つらさや大変さを、生体側の感覚やエネルギー消費で表すの が運動強度である。通常は酸素摂取量(VO2)や代謝等量(Metabolic Equivalent;MET) で表す。簡易的には心拍数で表すこともある。Borg Scaleは、まさに“つらさ”を主観的 に評価する、自覚的運動強度のスケールである。(表現:強い弱い、上げる下げる)
3 負荷量・運動量(Load amount, Momentum, Amount of exercise, Quantity of motion)
運動強度に時間を乗じたものが負荷の量や運動の量である。たとえば厚労省が提唱し た“エクササイズ”がそれに当たり、3METsの運動を2時間行えば6エクササイズとな る。「健康づくりのための身体活動基準 2013」では、一般人に1週間に23エクササイ ズの運動量を推奨している。従って「負荷量を20 Wattsに設定した」などの表現は誤り で「仕事率を20 Wattsに設定した」とすべきである。(表現:多い少ない、増やす減 らす)
4 Load(荷重)
“Load”とは荷重、重荷や苦労、“loading”は“負荷をかけること、負担をかけること”で あり、力学では「物体の2点が接触するところで発生する力」と定義される。単位に は ニュートンを用いる。 1ニュートンは、質量 1kg の物体に力を加えた時に、1m/s2の 加速度を生じさせる力の大きさである。従って「50WのLoadをかけた」などの表現は 誤りである。(大きい小さい、増やす減らす)
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