はじめよう、つづけよう 心臓リハビリテーション

遠隔心リハの効果

Effects of remote cardiac rehabilitation
2023.10.20

バイタル等をモニタリングしながら運動指導を含む遠隔による包括的な心臓管理を行うことを「遠隔心リハ」と定義すると、遠隔心リハに対する試みは遠隔医療デバイスの進歩と共に国土の広い海外で検討されてきました。まず、2005年ヨーロッパで最初に大規模な無作為非盲検割付多施設(TEN-HMS)が行われ、テレナースを行った遠隔群では標準治療群より生命予後を改善したと報告されました[1]。その後もいくつかの研究が報告されましたが、遠隔心リハでは、遠隔管理によって高い運動継続率が得られ、予後改善にはテレナースによる介入と、医師の積極介入が必要であることがわかっています。

2021年、心不全患者に対する遠隔心リハのメタアナライシスが発表されました[2]。この総括的研究では、欧米を中心に17の主要研究をもとに、2206人の患者さんを対象とし、標準治療と比較した遠隔心リハの効果が検証されました。結果、遠隔心リハは、6分間歩行テストや最大酸素摂取量における心肺機能の改善に有効であり、患者さんの生活の質(QOL)も改善させました。遠隔心リハによって、在宅運動中に重大な有害事象は報告されませんでしたが、入院および心臓関連死を遠隔心リハが予防できるかどうかは、エビデンスがまだ乏しいと結論づけられています。

日本では医師法第20条の制約のため遠隔診療には長らく消極的でした。さらに、医療提供側の負担が大きいことや、個人情報や安全面への懸念から遠隔医療は普及しませんでした。日本における遠隔医療の在り方が大きく変わったのは、コロナ流行です。心リハでは、2018年頃、遠方の重症心不全患者をテレナースで管理したところ、遠隔心リハを行った患者さんが標準治療群より再入院が少なく、うつ評価の点数(HADS)も改善しました[3]。この遠隔取り組みは、コロナ流行とともに急速に需要が高まり、遠隔管理を希望する患者が急増しました。以後、遠隔医療機器の小型化、低価格化が進んでおり、在宅エルゴメーターやApple Watchに代表されるようなウェアラブルデバイスや脈拍などの生体情報を測定できる植え込み型生体チップの開発まで行われています。

【文献】

  1. J Am Coll Cardiol. 2005;45(10):1654-64.
  2. Health Serv Insights. 2021;14:11786329211021668.
  3. Environ Health Prev Med. 2020;25(1):48.

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