はじめよう、つづけよう 心臓リハビリテーション

遠隔心リハの背景

Background of remote cardiac rehabilitation
2023.10.20

心臓リハビリは、急性期、回復期、維持期とシームレスに行う必要がありますが、入院中に心臓リハビリを行っていても外来で心臓リハビリに参加する心血管患者の比率はかなり低いのが現状です。更に、日本では心臓リハビリを行うために心肺機能検査による運動処方箋の発行が必要ですが、心肺機能検査を実施できる施設が限られているため、外来心リハサービスを提供できる施設が限られています。また重症心不全患者では、きめ細やかな運動・生活指導が必要であるにもかかわらず、病状的に何度も通院することが難しいため、再入院を繰り返す深刻な問題があります。このような背景の中、2020年以降はCOVID-19パンデミックによって、自宅でもできる遠隔心臓リハビリの需要は急速に拡大しました。ところが、心臓リハビリを提供できる施設は日本全国で1,533 施設中1,065 施設(69%) と限られたところ、コロナ流行によって密となりうる心臓リハビリを回避する傾向が顕著となり、心臓リハビリを行う施設がさらに少なくなりました。一方、通院しなくて参加できる遠隔心リハは、通院にかかる時間が不要であり、遠方在住の患者にはアクセスの問題が解決され、費用が節約できる可能性があること、集団で運動する感染リスクを回避できること、などのメリットがあり、IT機器の進歩とともに心臓リハビリサービスの手段として大きな注目をされてきています。遠隔心リハの効果は、様々な研究で運動耐容能改善、予後改善に対して有効とされています。
一方で、遠隔心リハは解決すべき問題も残っています。最も大事な点が安全性です。自宅で運動できそうな遠隔心リハの対象となる患者さんのリスクをしっかり見極め、適切な患者を選択することで安全性を確保することや、個人情報保護のセキュリティ対策を必須とすること、遠隔心リハ中の事故の管理に関して法的な問題が生じうるか話し合っていくことが必要です。また、遠隔医療だからといって医療の質が対面医療より劣っていてよいということはありませんので、遠隔心リハの実施にあたって質の評価が必要です。
遠隔医療は今後も成熟した議論を行っていく必要があります。

お問い合わせ先

公益財団法人 榊原記念財団 附属 榊原記念病院
電話番号 : 042(314)3111
対応時間 : 月~金 10:00~16:00
(祝日年末年始を除く)